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『なごや古本屋案内』を読んだら、本屋の店主に会いに行きたくなった

商品レビュー

大学時代、私は本屋に毎日通い、表紙とタイトルだけで面白そうな本を手に取り、2,3日に1冊は本を買っていくという生活を送っていました。余談ですが、そんな生活の中で出会った最高の本と言えば、『葉桜の季節に君を想うということ』。

 

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

 

 

まだ、あの本以上に「やられたっ!」という痛快さを抱いた本はありません。もちろん、私の読書量が猫の額に収まるほど少ないのは否定できないので、他にももっと名著はあるのかもしれませんが、当時のベストヒットと言えばやはりこれです。

 

話を戻しますと、そんな私が、これまでほとんど行ったことがないのが古本屋。少なくとも二桁を数えられる程度にしか行ったことはないでしょう。

 

でも、古本屋という空間は大好きなんです。あの古めかしい本の匂いと、縦にも横にも、そこいら中に本が敷き詰められた空間は何とも言えず魅力的なのですが、いかんせん敷居が高い。いや、敷居自体は低いのだけど、本棚で作られた塀が高いといった方が良いのかもしれません。店主の顔が見えないから怖かったのです。

 

私みたいなにわかの本好き(読書好きではない)が、こんな空間に足を踏み入れていいのだろうかと、なんとなく拒まれている感じがしていました。

 

そんな憧れだけは一人前の私が、最近読んで面白かった本があります。それが、『なごや古本屋案内』。

 

なごや古本屋案内

なごや古本屋案内

 

 

名古屋市内に「シマウマ書房」という古本屋を構える著者ご自身が、愛知・岐阜・三重の各県にある古本屋さんにインタビューし、古本屋さんそれぞれの想いなどを集めた書籍です。

 

著者曰く、この本は「この地域の街の古本屋を紹介するガイド本として作らせていただきました」とのこと。タイトルにもそのように『なごや古本屋案内』と書かれています。

 

ですが、私はガイドブックという位置づけよりも、“本好きが楽しむための本”だなと感じました。決して、“読書好きが楽しむための本”ではないかもしれませんが、本を好きな人、本がある空間が好きな人にとっては何とも言えない魅力を放つ本だと思います。

 

本棚には、必ず“想い”があります。それは、図書館だろうが新刊書店だろうが古本屋だろうが、当然個人の本棚だろうが変わりません。教育かお金稼ぎか娯楽か教養かetc……、その目的は様々にあると思いますが、本棚を見ればその人の想いがうかがえます。

 

この本の中では、そんな本棚に込められた古本屋店主たちの想いがつづられています。それは誰かとのコミュニケーションツールかもしれません。時には、店主自身の人生を表すものかもしれません。

 

この本は、そこに込められた想いを、改めて文字に起こしたものです。本が好きな人間ならば、きっと「分かる分かる」とうなずく部分があるでしょう。古本屋の本棚には、それぞれの店主たちの想いが深く現れていることが改めて感じられました。

 

店主の顔がうかがえないから怖いと感じていましたが、そんなことはなく、古本屋の本棚を見れば、その店主の想いというものはすぐに想像できるのだなと、思い知らされた次第です。

 

話は変わりますが、本書の中では各店主にとっての本という存在についても紹介されています。私は、「千代の介書店」の店主さんが、修理工をしていたころに言われたとされる次の言葉が非常に心に深く残りました。

 

本を一生懸命読みなさい。本からいろんなことを学んで、五十歳になった時に他人から相談を受けるようになりなさい。

 

本は娯楽だという人がいます。もちろんその想いは決して否定しません。ですが、自分にとっての本とはなんだろうと考えた時、小説よりも実用書や学術書が多く並ぶ自分の本棚を見て、上の言葉はその答えを示してくれているような気がしました。これを知ることができただけでも、私にとっては読んでおいて良かった本だと思います。

 

繰り返しになりますが、本書は、古本屋案内と銘打ってありますし、著者自身も古本屋のガイドブックとして位置付けています。もちろん、私もこれを読んでそこにのっている古本屋に行きたくなりましたし、いくつかの店舗には実際に行ってみようとも思いました。

 

ですが、やはり私は、古本屋という枠にとらわれない“本好きたちの本や本棚への想い”を色彩豊かに表した本だと感じました。

 

日常生活の中で、読書好きには会えても本好きに会うことはなかなかありません。本好きの本への想いを知ることがこんなにも楽しいものなのだなと感じることができる良い本だったと思います。皆さんも、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

 

ひょっとすると、古本屋ではなく古本屋の店主に会いに行きたくなるかもしれませんよ。